~しろくまの、灘の第1日目の話 5~ 語句特殊題に関して
(前回はこちら)
和語表現に関してはもちろんこれで終わりではありません。語句に関することが連続しすぎると、ちょっと食傷気味になるので、ちょっとテイストを変えて、「語句特殊題」に触れながら、小4くらいからの灘語句対策にもふれてみたいと思います。
灘は、申しましたように、単なる「ことわざ」「慣用句」「熟語」だけでなく、ひねりを加えて総合的に考えさせる語句の出題もします。たとえば
【 平成二十二年 大問2 】
○ 次の1~5およびA~Eの( )には、それぞれ漢字一字が入ります。例にならって、1~5に入る漢字に、A~Eに入る漢字を組み合わせて、別の漢字を作りなさい。ただし、A~Eは同じものを二度使ってはいけません。
例 ( 竹 )馬の友
1 一( )乱れぬ行進
2 ( )があったら入りたい
3 ( )年一昔
4 悪事千里を( )る
5 立( )伝中の人物
A 不( )実行
B 同( )異曲
C 自( )満足
例 勝てば( 官 )軍
D ( )点がゆく
E ( )科玉条
例の文の答え 「竹」+「官」→「管」
ことわざ、慣用句、四字熟語を知っていた上で、漢字の部首とつくりの構成を理解して、文字をつくる、という問題です。
知識を2階建て、3階建てにしておかないと答えられない問題ですよね。
【 平成十九年 大問3 】
○ 次の1~6の各組の(A)(B)に入る二つの漢字を、上と下、左と右、内と外などに組み合わせると、別の漢字一字ができます。その漢字を答えなさい。
例 A (A)八丁手八丁 B (B)のような男の子が生まれる 答え…「国」
1 (A)物買いの銭失い (B)で鼻をくくったような返事
2 (A)果応報 魚心あれば水(B)
3 (A)の目を見る (B)前の小僧習わぬ経を読む
4 (A)の息 (B)は人の上に人を造らず
5 一(A)先は闇 一(B)上の都合により退職する
6 百獣の(A) 百聞は一(B)にしかず
どうです? 大人でも十分楽しめる問題の数々ですよね。
こういうパターンを
☆ 知識を「上に積むパターン」 タテ知識
としろくまは分類していました。1つの知識だけではなく、もう1つ知っていた上で、さらにそれを用いて次の問題が完成する。なんか宝物を隠している部屋に行こうとしたら、その扉の鍵が入った箱の鍵を探さないと開きません、というような感じですよね。
さらに灘にはもう一つのパターンがあります。それは
☆ 知識を「横に並べるパターン」 ヨコ知識
です。
【 平成21年 大問4 】
○ 例にならって、次の1~5の各文の内容を表す、動物(鳥、虫をふくむ)を二種類用いたことわざを答えなさい。ただし動物名は後の語群から選びなさい。
例 都合のよい方にきりかえること 答 牛を馬にのりかえる
1 強大な敵の前ですくんで動けなくなること ( )
2 二つのものをねらって、どちらも失敗すること ( )
3 有力者の権威をうしろだてにしていばる小人物 ( )
4 親にあわないすぐれた子が生まれること ( )
5 自分の力量を考えず、むやみに人まねをして失敗すること。( )
[語群] 牛 馬 あぶ う かえる からす きつね たか とび とら はち へび
【 平成21年 大問5 】
○ 次の1~5の各組について、aとbの文の( )には、音読みで同じ読みかたをし、共通の部分を持った漢字が入ります。例にならって、それぞれの漢字を答えなさい。
例 a ( )は心。
b ( )笛をならす。
a 気 b 汽
1 a ( )心の部下に裏切られる。
b やっと( )調のきざしが見えてきた。
2 a 処世( )を身につける。
b 著( )業に精を出す。
3 a かれには( )質がある。
b かれは( )勢がよい。
4 a 門戸を開( )する。
b 諸国を歴( )する。
5 a 明( )止水。
b 逆( )に負けない。
【 平成19年 大問4 】
次の1~6の□に漢字一字を入れて、二とおりの読み方ができる熟語を作りなさい。
1 市□ 2 □紙 3 風□ 4 □手 5 年□ 6 生□
かんたんそうですが、なかなか「横に並べるパターン」も手強いのです。そういう問題に対して準備し、習熟しておく必要があります。
で、灘の第1日目対策としては、しろくまは、三ヵ年計画をおすすめしたいのです。
ついつい、暗記物だから小6夏休みにつめこめっ 追い上げがきくから秋からどんどんおぼえろっ と、なると、「量」の学習が他教科演習の時間を圧迫するだけでなく、同じ国語を勉強しているからと、国語の勉強の時間にカウントされてしまって、読解の問題演習量が減ってしまう、という「潜在的成績の低下」をもたらす危険があるんです。
灘をめざしていた子で、国語の読解のカンがかんじんの入試直前でにぶるのは、こういう学習に持ち込むことが原因の失敗なんです。
「つめこみ」とまではいきませんが、小4段階で、平常というかベーシックというか、通常講義の語句単元をとにかくしっかりおぼえていく、という「量」的な学習をしておくのです。
で、小5では灘のパターンをふまえた整理学習をし、小6ではむしろ類題演習をどんどんしていく、という三段階(三ヵ年)学習をしていってほしいのです。小6なってから語句つめこみ、では、灘はちょっとロスが大きい…
☆ 小4では計画表の語句系単元でしっかり学習する。いわゆることわざ・慣用句・熟語などの「単元別」にしっかり学習していく。
☆ 小5は「灘パターン」をふまえた整理学習をする。
申しましたように、たとえば「上に積むパターン」ですと、平成二十二年のように大問2は、
Aことわざ・慣用句 + B四字熟語 → C漢字の組み立て(部首)
でした。つまり、このABCをセットとして1つの学習をするのです。どういう整理かと言いますと、
小4では、Aばっかりやった後、Bばっかりをやり、Cばっかりをやっていく、という単元別学習をしていきます。
これに対して小5では、1クールでABCで整理・演習していくのです。しかも一日1セットずつ、でも毎日確実に、というやり方です。
第1日 A 平成二十二年 京都女子中 B 平成二十二年 上宮中 C 平成二十一年 桃山学院中
第2日 A 平成二十一年 滝川第二中 B 平成二十二年 甲南中 C 平成二十二年 大谷中
第3日 ………
というように、やっていくパターンです。たちまち、素人でも「灘パターン」の「異学校同傾向」問題の整理と演習題がつくれますよ。
こうやって、「まとめて」小6で強引に、ではなく、「計画的に」小4から毎日少しずつ、で「灘パターン」に習熟していくほうがはるかに成功への近道です。
灘をめざす人は、難しい、偏差値「上」の学校の問題ばかりをやろうとしていきますよね。
でも、そこが学習の幅を減らしてしまうところで、灘の第1日目の「異学校同傾向問題集」は、塾で学習する過去問とかぶらない学校に豊富にひそんでいるんですよ~ 苦手な子は、灘の過去問から入らずに(それは塾にまかせて)、「幅」を、やりやすい「異学校同傾向」問題を利用して広げていくことをしていけばよいのです。
[漢字の部首系] 大谷中 桃山学院中 聖母学院中
[漢字のパズル系] 和歌山信愛中 滝川中 関大一中
[熟語系] 金蘭会中 四天王寺羽曳が丘中 上宮中
[ことわざ・慣用句]金蘭会中 聖母学院中
どうです? 灘をめざしている子は、これらの学校の過去問なんて見てもいないでしょう? こういう場所に語句系の宝がザクザクひそんでいたんですよ~
小4では塾の語句系の学習計画にしっかり乗り、小5で上記の「異学校同傾向」問題で整理をはじめ、小6では演習に徹して形式に習熟していく…
また和語表現もしますが、次回からはこれらの「灘パターン」をふまえた「ことわざ・慣用句」をしていきますね。お楽しみに。
(次回に続く)