個別相談 2-018 算数が失速してきた (小6 男子)

(質問記事番号 【1399881】 投稿月 8月)

「××」さま
 いろいろお悩みだと思いますが、まず、「トンネルから抜け出さないとっ」と思いすぎないようにしてください。トンネルは進めば必ず出口がきます。つまり「進めば」よいのです。もっと言うと「迷路」だって、壁に手をつけてひたすら歩いていけば必ず出られるのに似て、あれこれ出てくる成績・順位に一喜一憂せず、秋まで前に進みましょう。
 さて、問題は「じゃあ、どう進むねんっ」という話ですが…

 まずは「問題」を見据えましょう~
 「できない」、ではなく、「どれが」に意識を向けてください。すべてできなくなっている、ということはまずありません。できない、が実感できない場合は逆に「できている」「好き」「得意」な問題をハッキリさせて、それ以外は「できない」に分類してみてください。
 ちょっと一見すっとんだ話なんですが… 昔、算数の講師でたいへん自動車好きなやつがいて、そいつとF1レースの話になったことがあるんです。
 ときどき、レースのスタートでエンジントラブルで止まってしまう「故障」がみられますよね。で、しろくまが
 「なんでスタートでエンジンかからないってトラブル起こるねんっ F1マシンなんて自動車工学の粋を集めてつくったんとちゃうの? おれの車なんかもう何年も乗っているけどエンジンかからなかった、なんてこと一回も無いでっ」
 と、言うたら、その算数科の講師が
 「ちゃうねんって。自動車工学の粋を集めてつくった車やからこそ、そういう故障が起こるんよ。複雑でデリケートで、燃料にちょっとの不純物があっても不調、機械にちょっとの狂いがあっても不調、そういうもんよ。おまえの安もんの車といっしょにしたらアカン。機械は単純なものほど故障はないんや」
 と、言うではないですか。で、はた、と思ったのですが…
 ある高度な入試のお勉強もそれに似ていて、「ちょっとのこと」「微細なこと」でつまづきが出てくるものなのですよ。「できない」のレベルが違うのです。
 そこそこ点数とっている、の「そこそこ」も、けっこうつっこんで細かく精査してみてください。いや、もっというと、できていない問題のノートや、思考の工程がわかるようなノートを、一度算数の先生に見せてほしいのです。最難関を指導している講師がみると、あ、こんなやり方しているとここまではできるけど、こっから先はできないな、というのがけっこうわかるもんなのです。
 できない結果ばかりみていると、結果を出す勉強をしてしまいますが、できていない工程をしっかり分析しておくのが大切です。

 しろくまでも言えることならば、前にもレスしましたが、公式ばかりをおぼえていたり、同じパターンの問題の「解き方」をおぼえてしまっていたりして、どうしてその「公式」になるのか、なぜその「解き方」で解けるのか、の部分を深く「理解」していないまま、算数の上滑りな学習をしてきたことが原因かもしれません。
 そこでご指摘の「つめこみすぎ」「消化不良」との関連があります。けっこう小5段階から実はそういうことが累積していて、最初は「公式だけ」、「解き方の暗記だけ」で解けていたものが、その組み合わせや複数工程が必要な問題を、いっきに答えを導き出そうとしすぎて、点数が出せなくなってきているのかもしれません。お子さんの「能力」の問題ではなく、ヨコの連続に気をとられすぎてタテの深みがなくなってきた算数の取り組みに時間を割きすぎたのが原因でしょう。
 なかなか講座を整理するのは難しいでしょうし、他の子が進んでいるのに取り残され感がありますが、ちょっと時間をつくってそういう「数を強いない」学習をすることにシフトされ、算数の先生に「学習の様子をしっかり伝えて」アドバイスをもらって計画を立て直されることをおすすめします。
 申しましたように、精度の高いエンジンは「ささやかな」「ちょっとの」ことで不調になりますが、ピットインしてしっかりメンテナンスをして、タイヤを交換する「時間」をとればいくらでもレースに復帰できます。

(保護者よりレス 割愛)

「××」さま
 「量」を軽量化する、というということと「テクニックの習熟」は矛盾しないとしろくまは考えています。
 その点、塾の先生の「おみたて」とも矛盾はないと思います。
 スピードが大切、というと、子どもはすべてにスピードを求めようとします。
 ていねいが大切、というと、子どもはすべてをていねいにしようとします。
 大人が思っている以上に子どもの「ふりこ」は極端で、今はスピード、次はていねいさ、この分野はスピード、でもこの分野はていねいに、というタテとヨコの使い分け、というのが自在にはできないのです。

 しろくまの時代、算数科の講師は説明会で、
 A段階 最初の取り組み「易問・量」「難問・質」
 B段階 次の取り組み 「易問・スピード」「難問・じっくり」
 C段階 修正段階   「易問・じっくり」or「難問・量」
 D段階 入試前3ヶ月 「易問・難問の混合」
 という話をしていました。

 Aは長期的には小3・4、短期的には小6の最初夏休み前、Bは長期的には小5、短期的には小6の夏休み、の算数の取り組みの「原則」と理解されたらよいと思うのです。
 かんたんな問題をたくさん、というのは二つの意味があります。
(1)ある公式や解き方の定着
(2)達成感の獲得
 前者は技術的なコトで、後者は精神的なモノですよね。「心・技並行」は習い事のはじめの極意。

 むずかしい問題でよいものを選択、というのは二つの意味があります。難問だが良問、というのは、定着した公式、理解した解き方を使えば必ず解けるが、解答にいきつくまでに正しい手順、正しい思考を必要とするもので「工程」のしっかりした問題のこと。できなくても工程を説明したとたん、あっ そうか! やられた~ と、できなくても「手応え」を感じ取れるもののことです。これは塾の先生の問題選択・準備能力が問われるところですよね。多くの塾のテキストで採用されている模範的難問がそれです。
(1)定着された公式・解き方が応用できているかの確認
(2)解けたときの「できた感」ではなく、解けなくても「わかった感」を味わう

 奇問というのは「わかった感」が味わえないもののことをいいます。
 で、ここまで続けてくると、子どもの理解度、習熟度に「差」が出てくるので「修正」が必要となります。

 そしてこのA段階を際だたせるのがB段階で、「かんたんな問題をたくさん」に「時間制限」を付加することにより、定着しつつ処理能力を高め、「できた感」を際だたせるわけです。
 「AからBへ」を続けると、子どもの理解度、習熟度に「差」が出てくるので「修正」を加える必要が出てきます。
 ケアレスミスも2種類で、「公式・解き方の定着」が低いから起こる場合と、「達成感」を味わっていなかったことから「めんどうさ」や「じゃまくささ」が表面化して「取り組みが雑」になって起こる場合があります。
 宿題が過負荷になると、どちらか、あるいはその両方が起こります。

 で、C段階に入ります。
 「かんたんな問題をゆっくり」やって、公式と理解の定着の理解を確認し、「できた感」を思い出す、ということが大切になるわけです。
 ABがだいたいできていれば「むずかしい問題をたくさん」やります。できなくてもわからなくてもかまいません。そうすることによって「できた問題」と「わかった問題」が逆に浮かび上がるでしょう? 長期的には夏休みの課題の発見になりますし、短期的には小6の「九月のテーマ」としてできなかった問題、わからなかった問題の精査に利用できます。

 そしてDへ、という流れになるわけですが…
 あえて、わかりきった流れを細かく説明してみました。「××」さまのお子さんも、この流れのどこかで「つまづき」をされていたり、どこかで正しい対処を抜かしていたりされていたのではないでしょうか。

 最初に申しましたように、ご懸念の、テクニックが希薄になることと、濃い学習は矛盾はしません。
 テクニックを「磨く」ことと「身につける」ことを勘違いされると失敗します。
 前者は「量」で後者は「質」で、前者は「スピード」で後者は「ゆっくり」で実現されます。

 今、お子さんが身に付いているテクニックは前者で磨き、定着していないテクニックは後者で身につけていく… こういうことだと思うのですが…
 不明な点があれば再質問をどうぞ。

外の人 について

中学受験・関西・エデュ・そして某掲示板(w 全ての所でマッチしない「外の人」です。 数年後には中学受験だけは真っ只中にはなると思います。 下の子が動き回る前にと勢いで作りました。
カテゴリー: 算数, 個別相談 タグ: , パーマリンク

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