~そして、また、入試が始まる~ ③ 中学入試の「社会」の話 (その3) (前回はこちら)
さて、今回は「地理」に関してです。
社会というのはよーく注意しないと、「社会が得意だ」と思っていても、地理が苦手… という子、けっこういます。
4教科校の私立の社会の先生にいろいろお話しをうかがったときに、たいていは
「歴史はみなさんよく勉強しておられて平均点が高いですよ」
「地理が平均点を下げていますね」
ということをおっしゃっていました。
中学によって、「地理」の出題形式はほんとうにさまざまです。たとえば、ふだんの模試の社会の地理では点数がとれている、そうして、まぁ、これは一面しかたがないことですが、「模試の点数をよくするための勉強」に傾斜してしまい、模試の地理の出題傾向に合わせた勉強に陥ってしまう、という可能性があるのです。
早期に社会を学習し始めた方は、この点、よ~く注意してみてやってください。
ふだんの模試の地理とは、まったく違う形式の地理を出題する学校、というのは、けっこうあるものです。現実問題として、社会の得点を上げる、ということと、地理でしっかり得点する、というのは、ほぼ同値と思ってもよいかもしれません。
とくに男子は、「歴史は好き、地理苦手」というケースが多く、社会の勉強をしているな、と、安心していたら好きな歴史ばっかり勉強していた、というケースもあります。
小6の秋からは、模試よりも過去問の社会、ということに意識をしっかりもっていってほしい、ということです。ということは、逆に、ふだんの模試での社会は、点数が低いことそのものに焦らず、しっかりと見直しを続けていく、という「復習主義」による「あえての低空飛行」でもよい、ということです。
ベースとなる7割の部分をおさえられたら、満点ねらいはしない、ということですね。志望校に合わせた学習が大切です。
地理は、以前にも説明しましたが
「産業別地理」と「地方別地理」
に、大きく分類でき、そのうえで、「統計重視型」、「地図重視型」に分類できます。グラフの読みとり、読図、というところです。
これは、その学校の特徴がよくあらわれます。理系の進学率が高いところ、男子校と女子校、高校入試がある学校、ない学校、で、分類できます。
総じて、兵庫県の女子中はどちらかといえば「産業別地理」に傾斜しており、大阪の女子中は「統計重視」の「産・地」併用、というケースが多いのです。
とくに理系の進学率の高い男子中は、共通一次試験の地理が統計・読図、地方別地理に傾斜していることから、ほぼ、同様な出題がなされています。
さて、しろくまの後輩の社会の講師は、どういうところに力点をおいて指導していたかと申しますと…
① 農林水産業
1「食糧自給率」
2「農作物と土地利用」
3「生産地と消費地を結ぶ運輸」
② 工業
1「工業製品(製鉄・自動車)」
2「工業地帯の分布」
3「工業生産に従事している人々」
4「工業製品の貿易・運輸」
③ 通信
1「放送・新聞・電話電信」
2「これらの産業に従事している人々」
④ 国土と自然
1「国土の位置」
2「気候条件かに見て特色ある地域の人々の生活」
3「公害問題」
4「水資源と森林資源」
しろくまノートに記されていました。でも、これにはさらにタネがあるんです。実はこれ、「学習指導要領」で小5で指導すべき「内容」の項目とほぼ同じなんです。彼のネタは、基本中の基本、学習指導要領にありました。
「内容の取り扱い」という項目をみますと
A 農業や水産業の盛んな地域の具体的事例を通して調べることとし、稲作のほか、野菜、果物、畜産物、水産物などの生産の中から一つを取り上げるものとする。
B 工業の盛んな地域の具体的事例を通して調べることとし、金属・機械・石油化学・食料品などの中から一つを取り上げるものとする。
C 「国土の位置」については、我が国の領土と近隣の諸国を取り上げるものとすること。その際、我が国や諸外国には国旗があることを理解するとともに、それわ尊重する態度を育てるよう配慮すること。
D 「気候条件から見て特色ある地域」については、事例地を選択して取り上げ、自然環境に適応しながら生活している人々の工夫を具体的に扱うこと。
E 「水資源と森林資源」については、我が国の国土保全の観点から扱うようにし、森林資源の育成や保護に従事している人々の工夫および環境保全のための国民一人一人の協力の必要性に気づくように配慮すること。
と、記されています。
どうです? たとえば、
1 稲作 2 製鉄 3 韓国や中国の人々の生活 4 沖縄県 5 琵琶湖
などで構成されている地理の入試問題みたことありませんか? 実は、この「内容の取り扱い」という項目によって入試問題がほぼ構成されているんですよ。まるで指導要領は中学入試作成者に、こうつくれ、と「指導」しているように見えませんか?
これらに最新の統計や地図、時事のネタをからませれば、保護者の方でも入試問題つくれますよ。
わたしの後輩の社会科講師は、これをネタに、学校の過去問を照合させ、6年あるい3年で出ていない分野を集めて、直前に特訓していたわけです。
「当ててるんではない、むこうから当たってくるんです」
とは、こういう意味だったんですよね…
むかしの神戸女学院や神戸海星、大阪星光の問題など、びっくりするほどこの形式に該当していました。
社会、とくに地理が苦手… 小5で社会を選択しなかった、小6から始めたけど地理が抜けている… 何から手をつけよう…
と、お悩みの方は、お通いの塾の模試の地理分野から、A~Eに該当する箇所だけ抜き出してまずは整理・復習しましょう。これで「基盤作り」をしていく。
「基盤」があれば、そこから上は自由にデコレーションできます。
社会が苦手だなぁ、という場合は、基盤がわからないんですよね。で、デコレーションにふりまわされて疲労しちゃう…
しろくまはあるもの使う主義ですから、小学校の教科書を用いましょう。複雑で、志望校には出題されもしない微細な項目に触れている(高校受験用を転用したような)ものは一切手をつけない。
春休みは、こういう基盤をまず身につける、というのでどうでしょうか?
(女子中のなかには、もうこれだけで地理はおしまい、という学校もあります。難関男子中の問題に飲み込まれないように、軽量化してやってください。算数や理科にそのエネルギーをまわしてやりましょう。)
さて、次は「歴史」です。
(次回に続く)